『わかる』ハシモト会長かく語りき 第7話 表の人生やろうや


『わかる』ハシモト会長かく語りき

第7話  表の人生やろうや

早速、家に帰って、嫁はんに言うたんです。

「今日、仕事やめてきた」

「せやけど、なんでやめましてん」

「何十年もコツコツ働いて来たけど、ひとつもえぇことなかったよなぁ。

そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。

いっぺん表をやろうと思うんや。だから、独立するねん。

表の人生やろうや

「それで、あんたこれから何しまんねん」

「なんか考えるわ」

嫁はんも、おもろい女でね。すぐに承諾してくれて、息子の貯金二十三万円をはたいて、イタリアに行かせてくれた。

その旅のなかで、今の商売を思いついたのです。

「俺なぁ、日本の企業でやっていないことをやる。紐つくるんや」

「おまえアホか。そんなもん、誰かて簡単にやれるやないか」

「これを本気でやるねん」

周りから笑われるし、最初は、どないしていいのかわからへん。

それで、紐をつくるための糊を探しに行ったんです。

「すんまへん、あんたんとこの糊、わけてくれへんか。今は金おまへんねん」

「ほう、そうでっか。うちには、百四十種類の糊があります。

この糊をうちの営業マンに毎日、1キロ届けさせるから、橋本さん、よかったらそれを使いなはれ!」

「それは、おおきに」

(つづく)


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。

「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」

珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。
毎週日曜日の夜21時に連載中。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』 に寄せて(クアトロガッツ キャプテン中辻)