『わかる』ハシモト会長かく語りき 第30話 「わかる 未だにわからんことだらけです」

小さい財布の小さいふ。


『わかる』ハシモト会長かく語りき

第30話 証言「わかる 未だにわからんことだらけです」

証言 林 建次
株式会社 ハヤシゴ 代表取締役

思い起こせば、一九七二年。

セランドの中島専務という方の紹介で、橋本社長にお会いしましてね。

自社ビルを買われたというので、出向いたのです。

一階に大きなテーブルがあり、そこには立派な本革の椅子が八脚も並べられていました。

聞けば、スイス製で当時一脚二十九万円もする代物。それなのに、二階に上がる階段は、半分剥がれたピータイル。

裂け目からコンクリートが覗いていたのです。

「俺やったら、二十九万円の椅子買うたら、 ピータイル新しくするなあ。

ピータイルそのままやったら椅子は一万円にするのになあ。このおっさんの発想はすごいな」

自分とはすべて正反対。この人物の奥にあるものは何やろ、と思ったのが最初の出会いでした。

あれから三十数年、ことあるごとに橋本社長の発想、哲学にふれ、目を洗われる思いをしてきた私は、気がつけば、橋本社長は心の師匠となっていたのです。

常に、私の考えていることと、逆。それなら、逆のことをすれば成功するのか・・・そうではないのです。

哲学とは、漢方薬のようなもので、効いてくるまでに時間がかかるんですね。

本来、日本が持っていた儀とか、儒教とかは、 だんだん忘れられてしまい、うわっつらのアメリカ文明をコピーしているような気がするんです。

だから、橋本社長の生き方というのが、肌にしみるんです。

未だに、発想が違うんです。 未だに、わからんことだらけです。

 

(つづく)


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。
毎週日曜日の夜21時に連載中。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』 に寄せて(クアトロガッツ 中辻)

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