「おおい。今度行かせてもらうわ」
栃木レザーの見学の段取りのお話もありハシモト会長、赤礎さん、栃木からスタッフの三柴さんが工房にお越しいただきました。
栃木レザーをバックアップしながら指南を続けてきた会長。栃木レザーの製造の中心者である三柴さんと日頃クアトロガッツがお世話になっている赤礎さん。革談話に花が咲きます。

トレードマークのハンチング姿で工房を訪れた会長。会長の会社は大阪の天王寺にあり、通天閣や新世界がそのすぐ近くにあります。

「新世界の橋の下に包丁屋がいて、それが凄いんや。観光客がようけ買っていくんやけど、包丁の良さを伝えているわけや。同じようにわれわれも革も良さを伝えていかないといけない。誰も革の本当のことをわかっていない。

革は傷があるというような欠点ばっかりが伝わって、革の本当の良さを伝えられていない。木も木目や節があってそれぞれ違うように、革のバラ傷やシワも革のうち。日本人は100年くらいしか革を見てきていないけど、海外は1000年も歴史がある

(タンニン鞣しにたいして)「クロム鞣し(注1)は10日でできるのに1ヶ月もかけてあんなアホなことできるかいな」と日本人は文句ばっかり言って揉めた。今のタンニン鞣しはそういう古い世代のあとに若い世代が作ったもの。丁寧に教えていかないとあかん。」

会長は革を伝える人です。どんなことであっても伝え広げる人がいたから多くの人が知ることができるのです。

(注1)1858年以降、数倍のスピードで鞣すことができる化学薬品によるクロム鞣しがドイツで考案され主流となりました。しかし昨今は環境問題の関心の高まりもあり、自然で革の風合いのあるタンニン鞣しが見直されるようになりつつあります。

栃木レザーをはじめとするタンニン鞣しの革のブランドによって、ようやく革を育てる、エイジングさせるという革の文化が定着してきました。長い間、化学薬品で短時間で鞣し、革の表面を塗料でべた塗りにして仕上げるクロム鞣しの革が主流となってきました。

「自分たちはプライドを持ってやっている。こだわりのない、価値のわからない人間に革は売らない。「これなんぼ?」「高い」というようなところには売りたくない。そこまで落ちていない。そういう気持ちで作っている。

ある時計メーカーはベルトには栃木レザーしか使わない。肌に接するものだから天然にこだわって、革の理屈というものを分かって使っているわけや。

今の若い子も女性も栃木レザーのエイジングをわかるようになってきた。革はようけあったけど、使うほどに後から良くなる素材はなかった。栃木は50年間あちこち革を使わずにいい原皮だけを使ってきた。昔は栃木レザーも革の良さを伝えるようなことはしてこなかったけど、これからは使う人にも革のことを伝えていって欲しい。」

「もっと大きなことをやろうや。一流のところは本物の革を求めてる。仕事は自分の為。政府や会社でもない、自分が働いたからもらえる。自分が開いたら、自然と入ってくるんや。そんな簡単なこともわからずに、小さい計算ばっかりしている。もっと大きなことをやろうや。」

会長はもっと新しい発想、アイデアが生まれることを望んでいます。

小さいふを栃木レザーのカタログに掲載いただきました

男らしい立派な体躯の栃木レザーの製作の中心者、三柴さんは栃木からお越しいただきました。

「栃木レザーのことを紹介しているページをみると、なんできれいなところばかり撮るのかと思う。自分たちはずるずるになって体力勝負でやっている。そういう風に革を作っているということを知ってほしい。

栃木レザーはまだましですがはじめの原皮は匂いもきつい。でも革は基本的に匂いも色もないんです。赤茶色のタンニンで鞣すから色がつく。いわゆる革の匂いは油と薬品の匂いです。タンナーによって匂いは全然違うから、革を見るとつい匂いを嗅いでしまう。」

「メインで使う油は魚油。でも精製されているので魚の匂いはしない。鞣すまでは魚油を使って、その後の革のキャラクター付けを動物の油で行っている。

原皮は冬より春夏がいい。冬は油が多く、毛が長いため手間がかかる。革を作るのは春秋がいい。革作りは冬は寒すぎて夏は暑すぎます。

タンニンの管理は温度、濃度、ペーハーの酸性アルカリ性の度合いでタンニンが入ったり出てしまう。温度も温かいと入りやすく、冬は入りにくい。差を縮めてコントロールを保つために薬品の使い方、処理の仕方と油が重要です。

革本来の油は鞣すときによくないので、国産の食肉は油が多く革に向いていない。肉が高いから革が高いわけではないんです。」

「もともと植物成分のタンニンは養分が多いので、革を鞣したあとの廃棄物をゴルフ場の芝の肥料にしたり無駄なく再利用しています。

バングラディッシュで問題になっている環境問題は主に排水処理の問題です。染料など何もかもを混ぜて流してしまっている。毛を溶かす石灰、硫化などの強アルカリの排水を処理せずに川に流すから問題になり、魚が生きれなくなる。

栃木レザーでは排水の処理に革10cm四方につき6円かかっています。排水は川に流せるまで綺麗にしなければならない。

皆は革の値段が高いというが、革の違いがわかり、こういうことを知っているから安い革だと自分たちは思う。一般の人は値段だけを見てタンニン鞣しよりもクロム鞣しの革が安いと思う方が多い。」

その後会長と赤礎さんがクアトロガッツが栃木レザーの見学に行く段取りをしてくれました。交通手段から宿泊場所、食事、遊び場所まで考えてくれるのです。

「そろそろいこか」

そうして会長は工房の階段をゆっくり降りていくのでした。


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。
毎週日曜日の夜21時に連載中。

『 わかる。ハシモト会長かく語りき』 に寄せて(クアトロガッツ 中辻)

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栃木レザー
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商売とは、人間とは、人生とは、「革っちゅうもんはなぁ、、、。」から始まる、人生談義。